2014年3月10日月曜日

判例タイムズを読みました

  今更ですが、司法書士の非弁行為に関する高松高裁判決の省略なしの文(判例タイムズ)を読みました。

  これを踏まえて、半熟行政書士さんの受けた広島高裁判決を読み直してみたいと思います。「依頼者の意向に従ってその趣旨内容を法律常識的な知識に基づいて整理し,これを法律的に正確に表現した書面を作成する」という表現を使っているのを見ても、広島高裁が高松高裁判決をリーディングケースとして捉えているのは確かでしょう。これまで高松高裁判決は、抜粋文しか読んだことがなかったので、これまでの主張と少し変わった部分も含めて、考えていきたいと思います。

 

法的な助言と、戦略的な意味合いの助言は分けて考えるべき。

  少し分かりづらい部分なので補足を。分かりやすい例としては、「就職活動ではネクタイをつけるべき」と助言をする場合など。就職活動は雇用契約の締結を目指す企業側との交渉とも言い換えられるが、その際行われる助言は必ずしも法的な意味を含まない助言もあり得るので、契約(示談)締結に向けた助言としても、法的な助言と戦略的な意味合いの助言を分けて考えるのが自然という意味です。

 これは半熟行政書士さんの主張の一部です。僕も「国民が持つべき法律常識」という概念について、「国民は法的無知であるべきなのか!?」という憤りをもっていましたが、高松高裁の中で語られたものは、少し僕の思っていたものと意味合いが違っていたようです。

 

「法律常識的な知識に基づく整序」とは

  高松高裁では、「法律常識的な知識に基づく整序」という概念を導くにあたって、

司法書士が他人から嘱託を受けた場合に、唯単にその口述に従つて機械的に書類作成に当るのではなく、嘱託人から真意を聴取しこれに法律的判断を加えて嘱託人の所期の目的が十分叶えられるように法律的に整理すべきことは当然であり、職責でもある

例えば訴状を作成する段階でも証拠の存在内容を念頭に置く必要があるし、前示の一般的な法律常識の範囲内で助言指導することは何ら差支えない。

とも言っています。

  では、専門的知識と常識的知識の線引きはどこでされるのか。この点が、半熟行政書士さんも納得できない部分、つまり『就職活動の助言で「ネクタイをしめたほうがいい」というのが、法的助言になるのか?』という疑問につながるのでしょう。

  高松高裁では、この線引きについて次のように言及しています。

これを一率に基準を立てて区分けすることは困難であつて、結局はその行為が嘱託に基く事務処理全体から見て個別的な書類作成行為に収束されるものであるか、これを越えて事件の包括的処理に向けられ事件内容についての鑑定に属する如き法律判断を加え、他人間の法律関係に立ち入るものであるかによつて決せられる

  ぶっちゃけて言うと、「内容からは判断できない」という事らしいです。全体的に見て、書類作成のために行ったか、事件自体を完全に(包括的に)解決しようとして行ったかによって線引きをするということです。

  行政書士の仕事は、場合によっては内容証明の送付だけで結果的に事件が解決してしまうこともあるかもしれませんが、ここでの「包括的に」とは、事件の完全解決を約して委任を受けるという意味です。

  つまり、「あなたの離婚の悩み、全て解決します」は、行政書士にとって誇大広告になるといったところでしょうか。

 

行政書士の正当業務行為

・弁護士法72条のその他の法律に行政書士は含まれるが、行政書士法のその他の法律に弁護士法は含まれない(但し書きがループしてしまうし、司法書士法はそのように解釈されている)。
・行政書士法には「代理人として作成」と明記されているのに、代理人が自分の頭で考えて助言や書類作成をすることが禁止されるのはおかしい。

  これらの半熟行政書士さんの主張は、広島高裁では『さておき』で済まされてしまったのですが、僕には法的整序や事件性の有無がどうかといった争点よりも気になっていたところでした。

  行政書士法で出来ると書いてあるのに、弁護士法違反だから、違法というのはおかしい。代理人として作成できるなら、本人の口述によらずとも、よく言われる人間タイプライターに成らずとも、自らの知識で書類を作成できるはずだと。

  しかし、これについては前出の引用でもあるように、単にその口述に従つて機械的に書類作成に当るのではなく、依頼人から真意を聴取しこれに法律的判断を加えて、目的が十分叶えられるように法律的に整理することは構わないというこだそうです。

  聴取の部分には、『「訴を提起すべきか、併せて証拠の申出をすべきか、仮差押、仮処分等の保全の措置に出るべきか、執行異議で対処すべきか」などまで判断するとともに、「資料の収集、帳簿の検討、関係者の面接調査、訴訟維持の指導」をもなすこと』も入ります。

  それらも、書類作成のために行ったか、で判断すべきとしています。

  広島高裁では『さておき』されて触れられていませんが、覆したようにも読み取れませんので、リーディングケースとしては生きているのでしょう。

 

じゃあ、何が「非弁」だったのか

 半熟行政書士さんは、今回の判決で「内容証明を送ること自体が、事件性ありとされてしまった」と悔やまれていますが、送っちゃダメとまでは心配しなくてもいいように思われます。

高松高裁では、

訴訟関係書類の作成は、前述のとおり、弁護士の主要業務の一部と全く同一であることからして、右書類作成については相当な法律知識を必要とすることは司法書士法一条の二の規定をまつまでもなく明らか

とも言っています。つまり、弁護士法72条に抵触する場合でも「書類作成」については司法書士、広島高裁の場合は行政書士の業務であることは認めています。ただ、「書類作成」以上のことを請け負うと、『業務範囲を逸脱した行為が弁護士法72条の構成要件を充足するときは、もはや正当な業務として違法性が阻却される理由はなくな』り全体として違法になるということらしい。

  では半熟行政書士さんのどの行為が、「書類作成」の範囲を超えたのか。

  実は、高松高裁判決においては、複数の事件について述べられており、事実調査を行い、判例から慰謝料を計算して内容証明を送った案件でも、「書類作成」のために留まるから正当業務行為と認定された案件もあるのです。

  その判断基準(書類作成を目的としているかどうか)に照らすと、半熟行政書士さんのブログに記載されている判決文には、それは許容範囲だろうという部分も多々あるのですが、2点気になるところもあります。

まず、 

本件回答書には記載していなかつた違約金条項のほか,利息制限法所定の制限利率を参考にした遅延損害金条項や違約の際の不貞行為の立証責任を○○が負わないとする旨の条項等を盛り込んだ本件和解契約書の原案

を作成したという部分。行政書士が双方代理できるのは、交渉は行政書士の業務ではなく、当事者双方が合意していることについて契約書を作成するからです。回答書に記載のなかった条項を盛り込むことは、「交渉テクニック」とみられた可能性があります。

次に、

本件回答書が○○に届くや,控訴人は,○○に対し,本件和解契約書の原案を作成する旨伝えると同時に控訴人の報酬額を訂正することに関するメールを送付

この部分の「報酬額を訂正」のところです。行政書士は、書類作成が業務なので書類の完成により報酬を得るものと考えられます。当然、許認可でも通らなかった申請書にお金を払ってくれる人はいないでしょうが、効果の大きさによって報酬を変えるという形態は、事件を包括的に請け負って成功報酬を得る行為とみなされたのではないかと思います。

  確かに、広島高裁は『様々な術作を弄しつつ法律的知見等に基づいて主体的に○○を指導していた』ことを一連の行為に照らして、行政書士の業務を超えると判示しています。ただ、高松高裁判決をリーディングケースとしているならば、単に「術作」を使ったからというだけで業務の範囲を超えるとしたとは言えないのではないかと思います。(ちなみに一部でも業務の範囲を超えると、全体として正当業務行為としての違法性阻却事由を失うとされています。)

 

これからの権利義務に関する書類作成

  ながながと書いた割に、グレーゾーンはグレーゾーンのままですが、一つ言えることは、行政書士が意識しておかなければいけないのは、内容証明等に工夫をしていいかどうかではなく、「相談依頼いただければ万事解決します」と受け止められるような宣伝をしないということではないでしょうか。

  弁護士をフルコースのメニューだとすると、隣接法律家のメニューは単品料理です。フルコースは高すぎる、単品料理だけでいい、という人もいるでしょう。ただ、客がコースなのか、単品なのか分からないようなメニューを用意することは問題です。

  行政書士は、あくまで本人が問題解決するのを、お手伝いするのが仕事です。本人の口述だけを書類にする必要はありませんが、本人の自ら解決しようとする意志なくしては成り立たないのです。(現在、半熟行政書士さんのホームページでは内容証明について、100%の結果を保証するものではないことを明記されています。)

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