2013年11月29日金曜日

行政書士等に事件性必要説は必要ない

 

「司法書士に対しては弁護士のような専門的法律知識を期待しているのではなく、国民一般として持つべき法律知識が要求されており、司法書士が行う法律判断作用は、嘱託人の嘱託の趣旨内容を正確に法律的に表現し、司法の運営に支障を来たさない限度で、法律的、常識的な知識に基づく整序的な事項に限って行われるべく、それ以上に専門的な鑑定に属すべき事務に及んだり、代理その他の方法で他人間の法律関係に立ち入るのは、司法書士の業務範囲を超えるものであり、その行為が弁護士法72条の構成要件を充足するときは、正当な業務として違法性を阻却される事由がなく、司法書士本来業務である書類作成行為も、業務範囲を逸脱した行為の一環としてなされたときは、全体として違法評価を受けることを免れない」

高松高裁判昭和54年6月11日


行政書士等に事件性必要説は必要ない

 この判例は、事件性があるかないかとともに論じられることが多いのですが、隣接法律職に限って言えば事件性の有無に拘り過ぎるのは疑問です。

 事件性の有無に拘っても、例えば請求書を書くのは事件性はないけど、相手が反論すれば事件性ありなど、いくらでもこじつけることが出来るからです。一方、警察に対する告訴状の作成は、行政書士業務とされていますが、これに事件性がないわけがありません。事件性の有無でなく、行政書士法第1条の2により、官公署への提出業務だから弁護士法72条の適用外となっていると考えるのが自然です。

 民事においても、行政書士は「権利義務の発生・存続・変更・消滅の効果を生じさせることを目的とする意思表示を内容とする文書(権利義務に関する書類)」の作成を業務としています。これを、「権利義務に関し争いがあり、もしくは権利義務に関し疑義があり、または新たな権利義務関係を発生する案件をさす。」 という東京高裁の判示に照らすと、「権利義務の発生」の部分で重なります。

 

 つまり、事件性のある法律事務についても、一部については行政書士の正当業務の範囲に入ると言えます。例えば、慰謝料の内容証明を送る場合でも、慰謝料の問題が事件性有りにしても、内容証明作成自体は権利義務(又は事実証明)に関わる書類の作成です。

 

 日弁連の事件性不要説でも「本条は刑罰法規であることから、他の法律で法律事務の内容を明確に特定されなければ、かえって疑義を生じさせる。少なくとも規制対象となる範囲・態様について予測可能性を確保する為には、制限的に列挙する方法、例示を列挙した上「正当業務行為」として特定する方法などその具体化を検討すべきである」と述べられています。

 近年の判例を見ても、司法も(狭義の)事件必要説に立っているようですが、弁護士法違反に問われた行政書士や司法書士が、「事件性はなかった」ことの主張に終始しているのはいただけない。堂々と自らを規定する行政書士法や司法書士法に則って、自らの業務の正当性を主張すべきだと思います。

 

 事件性の有無が問題となるのは、“弁護士資格等を有さず,法定の除外事由もないのに”取り扱った場合の話です。

 

正当な業務として違法性を阻却される事由がなくなるとき

 冒頭の高松高裁の判旨の肝は、“専門的な鑑定に属すべき事務に及んだり、代理その他の方法で他人間の法律関係に立ち入”ったときの一文です。

 この場合は、行政書士や司法書士の正当業務でも、弁護士法違反になることを示唆しています。ただ、これは司法書士法3条の場合の話です。行政書士法では、その第1条の3第2号で、“書類を代理人として作成すること”を許されています。

 この点、判例がないので何とも言えませんが、高松高裁で言うところの整序的な文書作成に、行政書士の権利義務に関する書類の作成が、そのまま当てはまるとするのは文理解釈として疑問の残るところです。代理人として作成するということは、依頼人の口述をタイプライター的に作成することを要しません。本人のために行為をすることを明示して、代理人として意思表示が出来ます。


 素直に判旨を読めば、書類作成の範囲を超えて交渉に臨んだり、書類作成に関係のない法律相談や指導を行えば、正当業務として主張できなくなるということなのでしょうが。裁判所は、いわば仲間内である弁護士の職域保護のために、弁護士法72条を濫用するきらいがあるので、油断できない所ではあります。

 

行政書士等は、本人のサポートが仕事

 裁判所の思惑とは別に、行政書士等が肝に銘じておかなければならないことがあります。弁護士という包括代理人を雇わない限り、それが高額報酬のため望めないことであったとしても、問題解決をするのは本人自身という事です。

 行政書士等は、そのサポートをするに過ぎません。

 本人自身が、法律を知り、交渉し、動かなければ問題解決は望めません。

 そのことを依頼を受けるときに、依頼者によく理解してもらう必要があります。行政書士は、あくまで一通いくらの代書屋です。成功報酬という概念もありません。



弁護士のような専門的法律知識を期待しているのではなく、国民一般として持つべき法律知識が要求されており”などと、裁判所は言っています。

 し、弁護士法は弁護士が品行方正であり専門知識を高めることを要求していますが、決して「国民一般」が法律的に無知であることを要求するものではありません。

 依頼人も、弁護士を雇って問題にあたることと、行政書士等を利用して解決を図ることの違いを認識し、法律サービスを選択しなければ、望む結果は得られないと言えると思います。

 そして、弁護士を頼るにしても依頼人が主体性を失っては、同様に望む結果は得られないでしょう。横領に走るなど依頼人を裏切る例はまれではあるでしょうが、行政書士が業務に当たるときほど証拠固めには気を使いませんし、その足で証拠を確保してくれもしません(そこまでやると採算が取れないらしい)。

 

 弁護士と行政書士が連携できる日がくれば、このような問題はなくなり、依頼人のベネフィットも少ないコストで最大に得ることが出来るのですが。

0 件のコメント:

コメントを投稿