2013年11月28日木曜日

弁護士法72条は職域保護を目的とするものなのか


弁護士法72条の意義

“弁護士法には厳格な資格要件が設けられ、かつ、その職務の誠実適正な遂行のための必要な規律に服すべきものとされるなど諸般の措置が講ぜられているのであるが、世上には、このような資格もなく、なんの規律にも服しない者が、みずからの利益のため、みだりに他人の法律事件に介入することを業とするような例もないではなく、これを放置するときは、当事者その他の関係人らの利益をそこね、法律生活の公正かつ円滑ないとなみを妨げ、ひいては法律秩序を害することになるので、同条(弁護士法72条)は、かかる行為を禁圧するために設けられたものと考えられるのである” 最高裁判所 昭和37年10月 4日判決

 つまり規律に服しない者が、法律事件に介入し、当事者らを食い物にすることを防ぐために設けられた条文ということです。


なのですが現在は

 高松高裁の司法書士に対する弁護士法72条違反判決以降、どうも弁護士法72条は、弁護士の職域確保のための条文となりさがっていると言えます。

 高松高裁で“司法書士に対しては弁護士のような専門的法律知識を期待しているのではなく、国民一般として持つべき法律知識が要求されており”と判示されたのは、隣接法律職の方々には有名な話なのですが、一般人としてこれはおかしくないでしょうか。

「国民一般として持つべき法律知識」って何?という話です。国民一般が専門的法律知識を持つことは悪いことなのでしょうか。

 専門知識を期待していないのは法曹界(裁判所含む)だけであり、依頼者が専門知識を期待するのは当然です。


ある行政書士に対する判決

 広島高裁で、行政書士に対してもこの判例に準じた判決がでたようです。しかし、個人の立場を離れてみてもやはり違和感のある判旨です。

 諸事情あって内容の詳細はここでは書けませんが、どう読んでも「依頼内容は高度だ。行政書士は法的専門知識を持って業務を行っている。だから違反。」としか読めません。依頼人軽視どころか完全に無視です。

 当事者その他の関係人の利益も、法律生活の円滑な営みも、何もない。ただ、弁護士の職域保護があるだけです。

 

低所得者のための・・・

 更に問題(法的にでなく社会的に)なのは、弁護士がこの行政書士のように依頼人に奉仕してくれるかということです。ホームページなどを見ていると「離婚問題着手金31万」とかサラッと書いてあります。ちなみにこの着手金30万の例は、「低所得者のための法律事務所」をうたっている所のものです。

 30万用意できなければ泣き寝入りしろということですが、更にさらに問題なのは、弁護士は専門知識を駆使してまで、内容証明でかたをつけようとはしてくれません。交渉は、弁護士しか出来ないことになっていますが、弁護士も交渉なんて七面倒臭いことはしません。調停に持ち込んで、お終いです、

 不調に終わっても着手金は還って来ません。

 

低所得者は誰を頼ればいいのか

 そもそも、弁護士が、行政書士並みの報酬で、行政書士並みのサービスを提供すれば、こんな業際問題なんて起きないんです。誰だって弁護士の方に依頼するでしょう。多くの弁護士が、仕事が行政書士に入るのは広告のせいだと考えているようですが、違います。

 全て、弁護士の金銭感覚の欠如が問題です。

 

72条は、弁護士の収入保護のためにあるのではない

 弁護士法72条は、冒頭の判例であるように、法的サービスを受ける当事者の保護のためにあります。司法書士や行政書士のサービスは、弁護士より劣っていなければならないから違法、などという結論は論外です。


 最後に、薬事法薬局距離制限規定違憲事件という判決を紹介しておきたいと思います。

 この判決では“医薬品供給の確保のためには他にもその方策があると考えられるから、無薬局地域等の解消を促進する目的のために設置場所の地域的制限のような強力な職業の自由の制限措置をとることは、目的と手段の均衡を著しく失するものであつて、とうていその合理性を認めることができない”と判示されています。

 つまり、法の目的(医薬品供給の確保)のためには、地域制限をしなくても他に方法もあるので、合理的ではない。と、いったところです。

 この論法から考えると、法的サービスの質の確保には、書士の専門性を制限するよりも、弁護士のサービスを受けやすくすることの方が合理的と言えます。

  言い換えれば、弁護士が経営努力さえすれば、非弁行為など自然と無くなるのです。それを、現状では隣接法律職のサービスを低下させることによって確保しようとしています。これは、甚だ不合理と言わざるを得ません。



 弁護士の職域確保の努力が、より良い法的サービスを、より利用しやすい価格で提供する努力に変えるよう、意識改革が行われることを願ってやみません。

3 件のコメント:

  1. > 言い換えれば、弁護士が経営努力さえすれば、非弁行為など自然と無くなるのです。
    > それを、現状では隣接法律職のサービスを低下させることによって確保しようと
    > しています。これは、甚だ不合理と言わざるを得ません。

     『隣接法律職のサービスを低下させることによって確保しようとしています』という表現からは、「隣接法律職のサービスは本来は弁護士のそれと同一レベルにあるにも関わらず、判例等の外的圧力によって隣接法律職のサービスを弁護士のそれより故意に低く抑え、よってそのような外的圧力によって作出された本来の姿とは異なるサービスの優劣によって、現状、弁護士が経営努力をしなくても収入が確保されるようになっている」という意味になりますが、その根拠についてお尋ねします。

    1.隣接法律職のサービスは本来は弁護士のそれと同一レベルであると判断される客観的根拠は何か。
     御貴殿が「隣接法律職のサービスは本来は弁護士のそれと同一レベルである」と“感じている”ことの根拠ではなく、客観的に同一レベルであると判断出来得る根拠を示されたい。

    2.『隣接法律職のサービスを低下させる』という御貴殿の主張について、(1)誰が、(2)どのような手段で、(3)何の目的で、『隣接法律職のサービスを低下させ』ているのか、ご教示願いたい。また、そのように判断される客観的根拠は何かを示されたい。


    > 弁護士の職域確保の努力が、より良い法的サービスを、より利用しやすい価格で
    > 提供する努力に変えるよう、意識改革が行われることを願ってやみません。

    3.この文章からは、あたかも弁護士が自らの職域確保にのみ専念し(平たく言えば、ゼニ儲けにのみ専心し)、司法制度のユーザーに対してより利用しやすい価格で弁護士の法的サービスを提供する努力を怠っているかのように読めますが、そのように判断される客観的根拠は何か。
     御貴殿がそのように“感じている”ことの根拠ではなく、『意識改革が行われる』必要があることの客観的根拠、逆に言えば、“現状は意識改革がなれさなければならないようなヒドい状態にある”と判断される客観的な根拠を示されたい。


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    1. 1.「隣接法律職のサービスは本来は弁護士のそれと同一レベルである」
      これについては、別に「本来」同一レベルと感じているわけではありません。むしろ、弁護士に依頼すれば価格相応の顧客満足が得られるべきです。
       マーケティング調査を行っている者ではないので、客観的なものは高松高裁判決での話に限ってしまうのでお許し下さい。
       高松高裁では、七件の公訴事実が上がっており六件が違法との判決を受けていますが、いずれも依頼人の不利益にはなっていないからです。中には、弁護士の対応に不満を持って、被告人の司法書士に依頼した人もいます。

      2.『隣接法律職のサービスを低下させる』の意味について
      (1)裁判所または告発人が(2)専門知識を持って仕事をすれば違法という判決を出すことによって、サービスを低下させていると思います。隣接法律職が、持てる知識を最大限に発揮しても依頼人に不利益が生じなければ問題ありません。
       (3)については、ぶっちゃけ分かりません。隣接法律職が専門的法律知識を持って使ったとしても、弁護士がそれ以上の知識を持っていれば問題ないはずです。実際のところ、高松高裁の例では、依頼者に不利益が生じたわけではないのですから。

      3.意識改革が必要な理由
       「低所得者のための法律事務所」でさえ着手金が30万以上だからです。
       何百万円のやりとりをする弁護士にとっては、たかが30万なのかもしれませんが、僕のような低所得者には2ヶ月分の手取り以上です。成功報酬だけが30万なら問題ないでしょう。取れた慰謝料の中から払えますから。でも、30万が用意できなければ、事実上法律サービスを受けられないという状況は変えたほうが良いでしょう?
       中には着手金は取らないとか努力している弁護士さんとか、法テラスで借りれる制度とかできています(負けたときどうなるのか心配ですが)が、やはり標準価格とか見てても高いです。

       コメント者さんは、弁護士さんでしょうか?
       もし良ければ何故、着手金で30万も必要なのか教えてください。弁護士は時間辺り2万は取らないと事務所経営が成り立たないという話も聞いたことがあります。弁護士事務所でも司法書士事務所でも、原価はそんなに変わらないと思うのですが、現実はどうなんでしょう?所属会の会費が高いのか、他に理由があるのか。

      あと、行政書士や司法書士の誇大広告を禁圧したいなら、専門的法律知識を使うなと指摘するよりも、高松高裁判決にある「弁護士は通常包括的に事件の処理を委任されるのに対し、司法書士は書類作成の委任であること」というのを強調したほうが良いように思うのですが。

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